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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)107号 判決

一 請求の原因事実中、本願商標について、その構成及び指定商品、登録出願から審決の成立に至るまでの特許庁における手続の経緯、引用商標の構成及び指定商品並びに審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について考察する。

1 審決は、本願商標の指定商品の業界において「TEST」が診断用試薬の意を表すものとして使用されていると認定し、成立に争いのない乙第二号証の一ないし六、第三号証の一ないし四、第四号証ないし第七号証及び第八号証の一ないし四によれば、診断用試薬商品として、「ガストロテスト」、「コリテストP」、「トロンボテストオーレン」、「ラスチノンテスト」、「エンザイムANAテスト」、「プレグノスチコンオール・イン・テスト」、「CAPテスト・パツク「三共」」、「プレグノスチコン プラノテスト」、「GOT・UVテスト「カルビオケム」」、「GPT・UVテスト「カルビオケム」」、グルコース・プレテスト」、「プロテイン・プレテスト」、「G・P・Iプレテスト」、「ウロビリ・プレテスト」があることが認められるが、右各証によれば、それらは、いずれも「テスト」が一般商品としての「診断用試薬」自体を指すものではなく、各自社の特定商品の商標として用いられていることが明らかであるから、審決の前記認定を裏付けるものとはいえないし、他に「TEST」及び「テスト」の文字が商品「診断用試薬」を表示するための一般的用語として普通に使用されている事実を認めるに足りる証拠はない。

かえつて、成立に争いのない甲第一二号証の一ないし三、五、第一三号証、第一四号証の一ないし三によれば、「TEST」という英語の基本的意味は、「試験」、「検査」であり、試薬の意味もないわけではないが、それは特殊な用法であり、試薬という意味で通常用いられる英語は「REAGENT」であり、我が国の医薬品業界において、「診断用試薬」を意味する語としては、「リエージエント」又は「プローベ」が普通に使用されていることが認められる。

2 前示のとおり、「TEST」には「検査」の意味があるから、それが「診断用試薬」に関係のある用語であることは否定できないが、商標を構成する文字部分が、自他商品識別の機能を有するかどうかについては、その部分のみではなく、他の構成部分の識別力、これとの結合態様等をも含めた相関的見地から決定されるべきものであるから、「TEST」の文字が商品「診断用試薬」に関係があるからといつて直ちにその文字部分に識別力がないと断定することはできない。

そして、「WELLCOTEST」の中には「WELL」という部分があり、成立に争いのない甲第一一号証の一、二、七、第一二号証の一ないし五によれば、「WELL」には副詞として「よく」、「巧みに」の意味、形容詞として「健康な」の意味があり、「TEST」とともに基本的な英語であることが認められ、一般の日本人間における英語普及度からすれば、「WELL」も「TEST」に劣らず平易な英語といわなければならない。したがつて、「WELL」が品質ないし効用表示的機能を有するものと理解し「WELLCOTEST」を「WELL」と「COTEST」に二分してとらえることも十分考えられるから、その意味において、「WELL」は識別力が弱いということができる。もし、「TEST」にも識別力がないとすれば、残るは「CO」だけということになるが、「CO」もこれだけを独立して取り上げるときは、その簡単な構成のために、識別力が強いということはできない。そうすると、「WELLCOTEST」は、どれといつて識別機能を果たすに足りる程の顕著な部分はないということになつてしまうであろう。このように、一つの文字商標を適宜に分割して、そのそれぞれについて、語義を詮索するときは、多くの文字商標は、たとえそれが本願商標のように造語商標であつても、簡単でありふれた基本的な語や、指定商品の品質、効能、用途等を表示する語を含むものとして理解しうることになるであろう。そのような場合、本来一つの商標として出願されたものが、いきおい、その各部分を安易に、ほとんど等しく、かつ、弱い結合度のものとして、たやすく分離考察される結果になり、適切ではない。右のような各部分も、結合の態様や他の構成部分のいかんにより、全体として十分自他商品の識別力をもつことがあるのは、いうまでもないことであるから、少なくとも、単にある構成部分について、それのみをみて、ありふれているとか、識別力が十分でないというだけでは、とうていその部分をたやすく分離ないし除外して考察する理由にはならない。

3 そこで、成立に争いのない甲第六号証ないし第九号証及び第一五号証ないし第一八号証によれば、原告は、本願商標の外にも、これと指定商品を同じくし、かつ、「WELLCO」ないし「ウエルコ」の部分を包含する商標として、登録第六〇四七五一号商標「WELLCOVAX」、登録第六一三三九四号商標「ウエルコバツクス」、登録第三二五五二号商標「WELLCOME」、登録第九三一九〇五号商標「WELLCOTRIN」の登録を受けていることが認められる。そして、成立に争いのない甲第一〇号証によれば、原告会社の所在地である英国においては、原告会社により、既に「WELLCOTEST」の商標が薬品について使用されているが、原告会社の取扱う商品には原告会社名そのままの「WELLCOME」の商標や、「WELLCOVAX」、「WELLCOTRIN」のように原告会社名の最初の六字「WELLCO」と他の文字を組合わせた数種の商標が使用されており、これらの商標の使用されている商品と区別され、英国のこの種の業界において、「WELLCOTEST」商標が一連に称呼して使用されており、「WELLCO」の略称で使用する例はないことが認められる。これらの事実に徴するときは、我が国においても、本願商標が、同様に一連に称呼して使用されるであろうことを推認でき、これを妨げる事情はうかがえない。

4 さらに、「WELLCOTEST」は、全体として新しい造語であつて、文字が同一の字体、大きさで一連に表示されているから、外観上これを分離する要因はない。そして、その文字自体の称呼も六音ないし七音であつて、それ程長いものでもなく、その調子も自然であつて、発音しやすいものである。

5 以上の諸事実関係を総合すると、本願商標については、その各構成部分は一体一連に結合しているものと認めるのが相当であるから、本願商標からは、その文字に相応して「ウエルコテスト」の称呼のみを生ずるというべきである。

6 そうすると、本願商標から生ずる称呼「ウエルコテスト」が引用商標から生ずる称呼「ウエルコン」と類似するとした審決の判断は誤りであつて、違法として取消されるべきである。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註その一〕 本件における審決理由の要点は左のとおりである。

本願商標の構成及び指定商品は前項記載のとおりである。

本願商標は、その構成から一連に「ウエルコテスト」の称呼を生ずることは否定しえないが、これを構成する文字中後半の「TEST」は、「試験」「検査」等の意を表す英語として我が国において親しまれている語である。そして、本願商標の指定商品との関係からすれば、右の語が診断用試薬の意を表すものとして、この種の業界において使用されている事実がある。そうすると、右の語は何ら自他商品の識別標識としての機能を果たすものとは認められないから、これに接する取引者、需要者は、右の部分を省略して、「WELLCO」の文字から生ずる称呼をもつて取引に当たる場合も決して少なくないものといわざるをえない。故に、本願商標からは「WELLCO」の文字に相応して「ウエルコ」の称呼をも生ずるとするのが相当である。

これに対して、登録第一〇〇一六二七号商標(別紙(二)のとおり、「WELCON」の欧文字と「ウエルコン」の片仮名文字とを上下二段に左横書きして成り、第一類「コンタクトレンズ用接眼液及びその他本類に属する商品」を指定商品として、昭和四二年一月三一日登録出願、昭和四八年三月一日登録。以下「引用商標」という。)は、「ウエルコン」の片仮名文字が欧文字「WELCON」の字音を表示したものと認められるから、これからは「ウエルコン」の称呼を生ずる。

そこで、本願商標から生ずる称呼「ウエルコ」と引用商標から生ずる称呼「ウエルコン」とを比較するに、両称呼は、強く印象される第一音から第四音までの構成音がすべて同じであり、わずかに、比較的印象され難い語尾音において「ン」の撥音の有無の微差があるに過ぎず、しかも、その差異音は、鼻音として極めて弱く聴取されるばかりでなく、比較的聴別し難い語尾に位置するものであるから、両者を一連に呼称した場合には、その全体の音感は彼此相紛らわしく、聴者をして聞き誤らしめるおそれは十分にあるといわなければならない。

そうすると、本願商標と引用商標とは、その外観、観念について論及するまでもなく、称呼において類似する商標であり、かつ、両者は、その指定商品においても同一又は類似のものである。

したがつて、本願商標は、商標法第四条第一項第一一号の規定に該当し、登録することができない。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙(一)

<省略>

別紙(二)

<省略>

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